法律を学ぶ

法学部生・法科大学院性・司法試験受験生・法律を知りたい人向けのブログ。

司法試験の学習計画を公開してみる(受験を1年以内に控えた受験生必見)

1.はじめに

 令和2年(2020年)司法試験に無事合格することができましたので、司法試験受験生や法学部・法科大学院生・法学初学者の皆様に向けて、司法試験に興味を持ってもらったり、合格の助けとなったりする情報の発信を積極的に行ってまいります。

 以前、重要判例の投稿を1本行いましたが、これも継続して行ってまいります。とはいえ、ブログ更新以外にもやらなければいけないことが多いので、更新頻度はそこまで多くないかもしれませんがよろしくお願い致します。

 さて、私は司法試験合格後、受験指導を行うべく、あるいみ壮大な人体実験のつもりで司法試験の受験勉強を行ってまいりました。勉強時間や、どのような勉強法がベストなのかを実際に自分の体を使って研究ました。まずは、学習の計画について、皆様にお伝えしたいことを以下で述べていきますので、ご感想やご意見・ご質問があればコメントやtwitter等でお知らせくださいね。

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2.私の司法試験ー学習計画

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学習計画①

 上記が私が司法試験を受験するちょうど1年前に計画した学習計画です。1つずつ解説していきます。この続きは次回解説しますね(チラりとみえてますが)。

(1)指針

 この計画の最も重要な部分がここです。司法試験まで約1年の段階でやらなければいけないことは何か。それは、過去問です。

 現行の司法試験では平成18年から令和2年まで14、15年分の過去問が既に存在します。所謂、論点というのは有限であり、近年の司法試験では以前に新司法試験で出題された論点が視点や事案を変えて出される傾向がかなり顕著です。したがって、私は、司法試験の過去問を必ず全年度分解くということを目標に設定しました。

 しかし、よく考えてみてください。1年分8科目を14、15年分に相当する量を全てこなすには、3日に1問のペースで問題を解き、参考答案を見て、採点実感・出題趣旨にも目を通すという作業をする必要があります。そして、当然ながらこれを1周しただけでは自己の知識として定着することはありません。2週、3週しなければ、完全に知識を定着させることはできないわけです。そうだとすれば、1日1問くらいのペースで解かなければ試験には間に合わないことになります。しかし、ロースクールの課題もこなしつつ、期末テスト等の勉強をしつつ、短答を解きつつ、過去問を1日1問のペースでこなすことはかなりきついことは容易に想像できます。

 そこで、私は考えました。それは、原則として過去問中心の勉強をするということです。また、他の教材には私の知らない知識や考え方、論点が掲載されており、手を広げたくなるところですが、そんなのを1周したところで試験で活用できる武器になるわけないです。ですので、過去問に絞ることに加え、極力他の基本書・問題集には手を付けないようにするという方針を立てました。もっとも、当時、初学者のころから取り組んでいた伊藤塾の論文マスターは何周かしておりましたので、論文マスターで利用した「問題研究」だけは継続して取り組んでいこうと考えました。

 重要なことは、①過去問に取り組むこと②手を広げ過ぎないことです。これさえ、守れば合格できると確信していました。

(2)各科目の使用教材

 次に、実際に使用する教材を絞るため、今使っている教材をあげ、メインで使用する教材を決めました。

 上記の表のうち、黄色のマーカーが施されている部分がメイン教材、緑色のマーカーが施されている部分が補助教材として決定しました。これらが、試験まで1年の間に主に使用する教材になります。

ア.憲法

 憲法過去問のみで十分対応可能であると考えました。受験生のレベルがさほど高くないことと、ある程度重要な人権のほとんどがすでに出題済みであると考えたからです。

 そこで、メインの使用教材は、①過去問、過去問をわかりやすく解説してくれる憲法ガールとしました。また、今まで司法試験では出題されたことがありませんが、統治部分をカバーするべく、伊藤塾の問題研究も使用しました。これ以外の基本書・予備校本は、辞書的に利用する程度でした。*1

 なお、重用した補助教材はありません。

イ.行政法

 行政法原則過去問のみで対応可能であると考えました。憲法と同様に受験生のレベルが高くなく、出題される範囲も、処分性・原告適格・訴えの利益・その他訴訟要件の検討・実体違法の主張・手続違法の主張・国賠とそこまで広くない印象がありましたので、受験勉強に欠ける時間は相対的に少なくても足りると思ったからです。

 そこで、メイン教材は、①過去問としました。ただし、個別法の解釈(巷では仕組み解釈などとも言われてますが)に関しては、様々な法律をみて、その解釈手順を知り、実際に試験で初めて接することになる法律に対して動揺することなく処理できるようになる必要があると菅方の出、個別法の解釈が割とわかりやすく書かれている②事例研究行政法もメインで利用しました。

 補助教材としては論文マスター問題研究を挙げてますが、論点の確認程度で足ります。個人的な感想ですが、問題の出来がやや悪いように思います。ロースクールの対策では利用価値があると思いますが、司法試験との関係では市販の問題集の方が出来が良いのではないでしょうか。

ウ.民法

 民法は難しかったです。当時、改正民法が施行されて間もなかったため、それに対応した問題集が少なかったことと、その問題集の評価がいかなるものかが不明であったため、果たしてどの問題集をやればいいのかわからなかったためです。また、過去問についても、改正後ではどう処理されるべきかよくわからないことが多く、自力で改正法対応がなされた基本書等を読み漁っておそらくこう処理することになるのではなかろうか、といちいち検討しければならなかったからです。結局、民法は問題集が充実した頃から重点的に取り組もうと考え、後回しにしてしまいました。猛省。最悪です。*2

 結局、①過去問は必須で、改正については、(予備校過去問解説講座を利用してもよかったですが、)自力で考えることし、これとは別に改正法の論文フォローをすべく、②アガルートの重要問題集を利用しました。自主ゼミ等で、辰巳のえんしゅう本も利用はしましたが、改正に関する記述内容の正確性に疑義があり、個人としては利用しませんでした。あとは、ロープラも軽くですが、つまんだ覚えがあります。

 この科目に関しては、焦って手を広げ過ぎた感は否めないです。敗因です。

エ.民事訴訟

 民事訴訟法は、①旧司法試験の過去問(論文マスター問題研究)+②司法試験の過去問を解きました。民訴に関しては、旧試の短文問題で論点の抽出と論証吐き出しのトレーニングをするのが最も効率がいい気がします。あてはめよりも抽象論で考えさせられる問題が多いです。とにかく、これらの繰り返しです。

オ.会社法

 会社法①論文マスター問題研究②過去問をメインで回していました。もっとも、会社法の過去問はよく作りこまれているものの、論文マスター問題研究の方は旧試の問題が多く、事実をうまく使ったり、深い考察が求められる問題が少なかったため、補助教材として会社法事例演習教材(京大ほんと言われているもの)を利用しました。これには模範解答がついてないので、模範解答を購入したり、BEXA等の予備校がおそらく講座を出しているのでそれを利用したりするのがよいと思います。

カ.刑法

 刑法は、①過去問がよく考えさせられるレベルの高い問題でかなり解き甲斐があります。まずは過去問です。また、パブロフの犬みたいに問題文を読むだけで論証をはけるようになるために②論文マスター問題研究もメインで利用しました。問題研究の刑法の答案は試験時間内に書く答案としてはコンパクトで網羅的に書かれていて、よかったと思います。

 補助教材は、こちらも③刑法事例演習教材刑法ですが、学説の対立がある箇所で試験に出そうな問題を重点的に目を通しました。

キ.刑事訴訟法

 刑事訴訟法①過去問②論文マスター問題研究をメインで利用しました。刑事系はあてはめ部分に点がふられていることを見越して、長文の問題である過去問はかなり利用しました。私自身刑事系は好きでしたので、伸ばそうと考えて上記の教材は何周もした気がします。

 補助教材は、今や司法試験では必須とも言ってよい③事例演習刑事訴訟法(所謂、古江本)でした。予備校で金太郎あめ答案を錬成してしまう人はこの本をよく読んでいただきたいです。私は、これを初めて読んだとき、衝撃で気絶しそうになりました。多分。

ク.労働法

 労働法はBEXA・資格スクエアで講師をされている①加藤喬先生の速修テキスト講座を利用しました。ロースクール入学して労働法の授業を受けても試験で使える知識が身につかなかった気がしたためです。過去問解説と論証講義を受講しましたが、加藤先生の授業もわかりやすく、特に過去問解説講義は司法試験の過去問について、出題趣旨・採点実感を踏まえた丁寧な解説をしてくれので、受講してよかったです。あとは、いわずもがなですが、②過去問ですね。半分くらいの論点は過去問の焼きまわしであることが大いので、必須です。

 なお、補助教材としては水町先生の事例演習労働法を利用しました。鉄板ですね。基礎的で、解説もわかりやすい良書です。ありがとう水町先生。

3.さいごに

 今回は使用教材について詳しくお話しました。とにかく、試験に向けて使用教材を減らすこと過去問をメインで取り組むことは超重要です。これだけ言ってるのですから、いかに重要なことかおわかりいただけると思います。

 次回は過去問や問題集を何周したのか、重要度ランク、難易度ランクについてお話していきますので、よろしくお願します。ご意見・質問等あればtwitter、コメント等でお知らせください。

*1:予備校本を辞書的に利用するというのはやや語弊がありそうですね。わからない部分があったときに該当箇所をさっと見たくらいのニュアンスでしょうか。

*2:おかげさまで司法試験形式的な途中答案、設問3真っ白=素点65点満点スタート、評価Bでした。評価Eだと思い絶望してましたが意外と何とかなっていた…。